自閉症・ABAに対する誤解
誤解その1:
自閉症は親の養育態度の誤りが原因。
自閉症とは、1943年にアメリカの精神科医カナーが、自閉的孤立と同一性保持要求(こだわり行動)の特徴を持つ子どもたちに注目し、早期幼児自閉症として発表したのが始まりです。これらの子供たちは、周りの人を拒絶し、自分の世界に閉じこもっているように見えたことから、当時の精神分析派の学者によって、母子関係や家族関係の歪みなど不適切な養育態度や養育環境が原因とされました。しかし、その後の研究によって、そのような心因説は否定され、現在では何らかの脳の器質的、あるいは機能的障害が原因と考えられています。
誤解その2:
自閉症は発達障害なのだから、発達しなくても仕方がない。
発達障害児であっても、発達はします。ABAでは、その子が1つ1つの行動を獲得することができる環境条件を整えることで、よりその可能性を高めることができると考えます。発達の遅滞を、単に障害のせいとして終わらせてしまうのではなく、発達を促進できる環境条件を同定し、個々に応じた条件を提案していきます。
誤解その3:
自閉症児であっても、本人の意思を尊重し、見守ることが大切であり、非指示的で受容的な態度で接するのが良い。
非指示的で許容的な療育環境や治療法は自閉症の子どもの行動に望ましい変化をもたらさないことが明らかにされています。個々の子どもの能力や発達に合わせて、生活に必要な言語や行動パターンを積極的に教えていくことが大切です。
誤解その4:
ABAは人の心を無視している。
ABAでは、心の中の心理的な出来事も内的な行動として捉えます。決して心を否定しているわけではありません。内的行動を生み出す環境条件を操作することで、心に働きかけます。
誤解その5:
ABAは子どもを動物的に扱い、個人を無視している。(ABAは実験に基づいた手法を用いているから)
個人を無視しているのではなく、一般的法則を利用することによって、個人差をも超えて当てはまることを利用しているのです。医学でも、動物実験や治験を重ね、一般的な成功率を求めますよね。心理学でも同じことです。実験やデータによって科学的根拠を示すのは、このアプローチが個人にとって本当に有益かをセラピストだけでなく、セラピーを受ける個人やその家族も客観的に判断できるようにするためです。
誤解その6:
週40時間のセラピーを受けないと効果がない。(ロバース博士の研究報告(1987年)より)
ロバース博士の研究(1987年)は、自閉症のこどもたちを2つのグループにわけ、グループAは平均時間40時間の応用行動分析療法を与え、グループBは平均時間10時間の応用行動分析療法と他のセラピーを行った、という研究です。これは、平均40時間のABAが行われたということで、グループAの全員が40時間受けたわけではありません(中には高機能の子どもで20時間、中にはやはり40時間以上を要するこどもがいたことは事実です)。
また、最近の香港支局での研究(2002年)では、週15時間のセラピーで十分な効果があることが立証されています。
誤解その7:
ABAを用いた療育では子どもの行動が機械的でロボットのようになってしまう。
大人でも自動車の運転や外国語を学び、完全に習得するまでには時間がかかるように、自閉症の子どもたちが新しい言語や遊びのスキル、社会的スキルを学び、流暢に使いこなせるようになるまでには長い時間がかかります。新しい行動を学び始めた頃は子どもの行動がぎこちなく、不自然に見えるかもしれません。しかし、時間をかけて練習を重ねるにつれて、次第に流暢で自然に振舞えるようになっていきます。ABAは様々な状況において言語や遊び、社会的なスキルを自然に使うことができるようにするための科学的に証明されたティーチングメソッドなのです。
誤解その8:
ABAは子どもとセラピストの1対1で行なわなければならない。
Autism Partnershipでは、セラピストとの1対1の学習のみには固執しません。Autism
Partnershipのセラピーは、様々な環境設定の中で行われるばかりでなく、実に様々な方法で子どもに提供されます。例えば、公園で他の子どもも交えて遊びながら、遊びのスキルの修得を目指します。スキル修得の最終的な目標は、『子どもが特定の場面や状況にとらわれず、様々な場面、状況においても、学習した適切な行動で振る舞い、周囲と関わりを持てるようになる』こと(「般化」)です。トレーニングを行う環境や方法を固定化しないことで、学習されたことが「般化」されやすいように、こどもを手助けすることが出来るのです。
誤解その9:
自閉症の子どもは物事を理解するのに時間がかかるだけで、少しずつではあっても他の子どもと同じように先生や友達から学び取っていける。
自閉症の子どもは認知機能に障害があるため、彼らが存在し、生活している周囲の世界を理解したり、その世界に働きかけたりするための基本的なスキルを自然に獲得していくということができません。そして、そのようなスキルが獲得できていなければ、一般的に普通と考えられる方法で、彼らが突然、自発的かつ自立的に学習を始めることができるということはありません。
ABAの基本方針に基づいた、子どもへの集中的な介入は、彼らが、言語、遊び、社交性のスキルに関して、同年代の子どもに負っている遅れを取り戻すために格別な効果を持っているということが立証されてきています。長期的には、集中的プログラムは、子どもの学習を妨げていた脳の機能のあり方に、重要な、そして永続的な変化を導くことになるのです。
誤解その10:
強化子(ご褒美)としてのおもちゃや食べ物は毎回与えなければならず、一生なくせない。
強化子の与え方にもいくつかの技法があり、それらを使って、強化子を与えなければならない回数を徐々に減らしていき、また、強化子の内容もより社会的にふさわしいもの(例えば、誉め言葉や週末の遊園地など)へと徐々に移行させていきます。
< 参考文献 >
次良丸睦子・五十嵐一枝・加藤千佐子・高橋君江 2000 子どもの発達と保育カウンセリング p109−114 金子書房
麻生武・浜田寿美男(編) 2005 よくわかる臨床発達心理学 p126−127 ミネルヴァ書房